独立国家のつくりかたを読んで以来、すっかり坂口恭平氏のファンになってしまいましたgoryugoでございます。
この坂口氏、他にも「変な」本を色々書いておりまして、今回はホームレス小説「隅田川のエジソン」を読んでみました。
リアルホームレス物語
隅田川のエジソン。この本は小説というカタチをとってはいますが、実際に出てくる人物たちはそれぞれ素材になったモデルの方が実在しているそうで、そういう意味ではリアルホームレス物語でもあり「ホームレス研究家」の坂口氏の研究の集大成と考えることもできます。
ホームレスっていうと、私から見れば一体どんな生活をしているのかってのは想像もつかないことだらけなのですが、物語自体はわりとシンプル。
元土方の主人公硯木(失業直後)が、酒を飲んでたら飲みすぎて公園で寝てしまって、財布が盗まれて無一文に。
この時点でなんかもう色々人生絶望に明け暮れそうなものですが、主人公は特に落ち込むこともなく、実に気楽に「なんとなく」ホームレスになってしまう。
そのままなんとなくホームレス生活をしていく中で、主人公は多様な才能を発揮しまくり、電気がある家を作って、自炊をして、カラオケしながら酒を飲んで毎日楽しく過ごしまくる。
広がる価値観と世界観
ストーリーがもの凄い、ってタイプの話ではなく、面白いのは主人公の考え方や値観、そしてホームレスで生きていくための生活の知恵。
テレカを拾ってお金を稼いだり、花火大会で放置されるブルーシートを使って家の材料にしたり。
主人公以外にも「シケモク(吸いきっていないタバコ)」を集めてまわってホームレスに配って生活している人、家の屋根にソーラーパネルを取り付けて電気を作ってる人、学校の先生をやってて、解雇されたわけでもないのに「自主的に路上に出てきた」人。
なんというかものすごく多様なホームレスの世界があって、これを見てると本当に「生き方」ってのは様々だなぁってのを思い知らされる。
わりと世の中なんとでも生きていけるんじゃない?
生き方ってのは人それぞれで、人それぞれ色んな価値観があって、そして色んな生き方があって。どれがいいとか悪いとか、優れているとか劣っているとかなんてない。
なんだかんだ「物語」なので、主人公は信じられないくらい楽観的で明るいし、基本的にはどれも「うまくいく」ストーリーで、ホームレスの負の面はあまり出てこないし、あまり深くはわからない。
それでも、小説でありながらも「生き方」だとか「価値観」だとか、読んでて学べるところはすごく沢山。
生きていく方法って自分が思っているよりもはるかにたくさんの方法があるんだなぁって、色々な世界を知った気分になれてとても楽しい。
そして、「変な人たち」の物語ってのは、読んでてすごく面白いなぁと改めて思ったのでありました。