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この「残酷な世界」で「好き」を仕事にするためにはどうすればいいのか

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最近は、iPhoneでKindle本を読むようになってから、読書のペースがわりと上がってきた。と言っても読むペースは1週間に1〜2冊程度なんだけど、一時期の月に1冊も読んでない頃に比べれば大きな進歩。

そんな中で読んだ、橘玲の「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」

この人は、いわゆる「金融系」というか個人がお金の問題とどう向き合うか、みたいな話が多い中、この本はもう少し「生き延びる」がテーマ。

いくつか印象に残ったフレーズと共に紹介してみようと思います。

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序盤は「人は努力すれば成長できるのか」について、実は結構これが「先天的に決まってしまっているのではないか」という「残酷な結果」が研究により明らかにされそうになっている、という感じで話は進む。

その上で、どうやって「生き延びるのか」

好きなことを仕事にすれば成功できる。これは現代社会の最強のイデオロギーで、反論はもちろん揶揄することすら許されない。そして驚くべきことに、ほとんどの場合この宣託は正しい。嫌いなことをガマンして頑張るなんてことは、それこそ特別な能力のあるごく一部のひとにしかできないからだ。

大人たちはしたり顔でいう。「正社員として就職し、趣味のバイクは休日に楽しめばいいじゃないか」。でも彼らは、勉強もできなければ、机に向かって事務仕事をすることもできないからこそ、「好きを仕事に」するしかなかったのだ。ここでの問題は、好きなことが常に市場で高く評価されるわけではないということだ。だからといって、市場で高い値段がつくこと(言語的知能や論理数学的知能)を努力によって好きになることもできない。

グローバルな能力主義の世界では、夢をあきらめてしまえば、マックジョブの退屈な毎日が待っているだけだ。だからリップスには、夢をあきらめることが許されない

わたしが変われば、世界は変わる。だったら、残された問題はたったひとつだ。はたして、わたしは変われるのか?

その後出てくるのが「愛情空間」「友情空間」「政治空間」「貨幣空間」

人の世界はこんな感じの4種類に分類できる。

 愛情空間は、二人から一〇人くらいの小さな人間関係で、半径一〇メートルくらいで収まってしまう。ところがこの小さな世界が、人生の価値の大半を占める。

一方貨幣空間は、お金を媒介にして誰とでもつながるから、原理的にその範囲は無限大だ。

最近になってから、いわゆる「お金持ち」になるのに重要なのは、この「貨幣空間」でうまく生きていくこと。

ひと昔前は、経営者は戦国武将にたとえられた(「家康型の経営を目指せ」とか)。こういう比喩がリアリティをもったのは、日本のビジネスがムラ社会での権力ゲームだったからだ。アジアの新興国ではこうした傾向がいまも顕著で、華僑などの財閥は独裁者と結託した「政商」として莫大な富を蓄えた。 ところがいつの間にか、日本では史実をひいて経営を語るという手法はまったく流行らなくなった。

貨幣空間の成功者は、ひととひととをつなぐことに喜びを見出している。でもこれはたんなる善意ではなく、優秀な人材を紹介することで人間関係の貸借対照表に資産を加えることができることを知っているからだ。

↓確かに、こういう風に生きることが簡単になった。この4種類の空間を使って時代の流れを説明していくあたりが一番面白かった。

お金を稼ぐ能力さえあれば、愛情や友情などの面倒に巻き込まれることはなく、貨幣空間のフラットな人間関係だけでなに不自由なく暮らしていける。

貨幣空間は「友情のない世界」だから、市場の倫理さえ遵守していれば、外見や性格や人種や出自は誰も気にしない。学校でいじめられ、絶望した子どもたちも、社会に出れば貨幣空間のなかに生きる場所を与えられる(そしてしばしば成功する)。

ぼくたちはもう、あの懐かしい三丁目の夕日(昭和三十年代的安心社会)を見ることはない。世界はよりフラット化し、人間関係はますます希薄になり、政治空間は貨幣によって侵食されていく。この巨大な潮流は、誰にも止められない。

そこからもう一段階話は進んで、今度は「名誉」が生きる喜びにつながる、とかをLINUXを引き合いに出して話される。

リーナスは、お金や仕事とは関係なく、好きなことを純粋に楽しむことこそが人生の意味だという。ハッカーこそが、人類の進化の最終段階にはじめて到達した「選ばれしひとびと」なのだ。

幸福への近道は、金銭的な報酬の多寡は気にせず(もちろん多いほうがいいけれど)、好きなことをやってみんなから評価してもらうことだ。

そして、最終的にどういうことを目指すのか、というのは「ロングテール」のしっぽで生きていくんだ、という感じの結論。

そして、何よりも大事なのはこれ。

「好き」を仕事にしたいのなら、ビジネスモデル(収益化の仕組み)を自分で設計しなくてはならない。

残念ながら「具体的な方法」というのは(当然ながら)この本に書かれているわけではないんだけど、納得、共感できる部分は大いにあって、なんというか「生きる」ということについて改めて考えさせられた感じでありました。

今まで読んだ橘玲作品の中で、一番人に勧めやすい(多くの人の参考になりやすい)本かも。


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